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[読書録]HIGH OUTPUT MANAGEMENT

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HIGH OUTPUT MANAGEMENT(2017/1/11出版, 344ページ)

感想サマリ

本書におけるマネージャーのアウトプットは、以下のように定義される。

マネージャーのアウトプットとは、その直後の監督下にあったり、または影響下にある組織体のアウトプットである

本書におけるマネージャーが行うべき活動は、本書内のこの図によって示されている。

業績を引き上げる方法 本書p.242 図11-1から筆者が抜粋

最終的に、部下となる人々をどのように訓練し、動機づけを行っていくか、各人に対してどのようなマネジメント・スタイルを適用していくかが書かれた本。

なぜ、マネジメントが必要になってくるかは、本書冒頭の朝食工場の例による、卵の調理がボトルネックになることから始まり、複数拠点に製造が広がったときに、どのような組織構造で朝食工場を広げていくかを段階を追って説明している。

また、本書の読書ターゲットであるマネージャー層の仕事である、「採用」「人事考課」についても記載されているので、本書最後のチェックシートとともに自身のマネジメントスタイルを見直すのに役立つことがまとめられている良書だと感じた。

本書の関連リンク

内容メモ

イントロダクション
  • この本を初めて書いたのは1983年のことだが、そのほとんどが歳月の経過には影響されないままでいる
  • しかし、1980年代に経営管理者が仕事をする際の環境を変える、重要な2つの出来事が起こった
    1. グローバリゼーション。例)日本の米国DRAM市場進出における競争激化
    2. 情報革命。例)電子メール
  • 本書が書かれた時代が見越した新環境の2つのルール
    1. すべてがより急速に起きる
    2. なしうることはすべてなされうる(いずれ誰かがやってしまう)
  • 変化が大きな世界での職場のマネージャーは、「無秩序(カオス)に対する、より高度な受容力と許容性を身に着けなければならない
  • マネージャーのアウトプットとは、その直後の監督下にあったり、または影響下にある組織体のアウトプットである
  • マネージャーのキャリアについて考える、3つの問い
    1. あなたは本当の価値を付加しているのか?それとも単に情報をあちこちへ流しているだけなのか。付加価値をどうやって高めようとしているのか。
    2. 自分の周囲(会社内だけでなく、業界全体で)で何が起こっているかに関して、いつもアンテナを張り、回路を接続して、情報収集を怠らないでいるか?
    3. 新しいアイデアや、新しい手法や、新しい技術をいつも試みているか?

第1部 朝食工場(生産の基本原理) 1章 生産の基本

  • 生産に関する基本的要件
    • 顧客の要件に応じて、あらかじめ決められた”一定の”時間に、客に、納得してもらえる品質水準の製品を、できるだけ”安い”コストで、作り上げて提供する
  • 制約的(リミッティング)ステップ
    • 取り掛かる作業の全体的なステップのこと。まずこれを突き止める
    • 本書の例では、卵を調理することがリミッティング・ステップとなる
  • 総処理時間(スループット)
    • プロセス全体の所要時間
  • 相殺(オフセット。相互埋め合わせ、調整)
    • 最も重要不可欠なステップを中心に流れを計画し、他のステップはそれぞれの処理時間に応じてずらす
  • 製造作業の3つの基本作業
    1. プロセス(加工・処理)製造過程
    2. アセンブリー(組み立て・まとめあげ)
    3. テスト(試験・検査)
  • トースターの処理能力の限界を考慮した例
    • 今度はトーストを渡す時間とトースターの空きを待つ時間を考えなければならないので、生産プロセス全体を考え直さねばならない
    • トースター能力が、次のリミッティング・ステップとなり、作業はそれを中心につくり直さねばならない
  • 経営資源を利用するのに、“費用対効果上の最も良い方法”、つまり、あらゆる種類の生産作業を最適化するカギを発見することになる
  • 連続卵ゆで器を購入した大量生産の例
    • 柔軟性を犠牲にして作業を”連続作業”に変えてしまう。そうすると、客の注文を客が要求するときと方法通りには準備することができない
  • 連続作業は、それがそのまま低コスト、高品質を意味するわけではない
    • 卵ゆで器の中野水温が誰も気づかないうりに仕様からはずれたらどうなるか
    • 「機能テスト」「仕掛り(途中)検査」「受け入れ検査」などが必要になってくる
  • どの生産の流れにもっ共有する基本的な特徴
    • 物はプロセスを通って動くにつれて次第に価値が高くなる
    • どのような問題にしても、生産プロセスの中で、できるかぎり”価値が最低”の段階で問題を発見して解決すべきである

2章 朝食工場を動かす

  • 業務をうまく運営するには、良い”インディケーター(指標)“、つまり、状況を”測定するもの”が必要になる
  • 朝食工場の例
    1. 販売予測
    2. 原材料の在庫量
    3. 生産説部の状態
    4. 人員
  • 人は目に見えている物に向かってハンドルや舵を取ろうとするが、取りがちになることへの対処も重要
    • このような場合は、2つのインディケーターをペアで使うと良い。在庫管理の例だと、在庫量と品不足
  • よりインディケーターのルール
    1. 測定はどんな測定であったとしても、ないよりはよい
    • ただ、有効なインディケーターは、作業単位の”アウトプット”を測定するものであって、それに含まれる”活動”だけを見るものではない
      • セールスパーソンの場合、注文で測定するものであって、何回訪問したかの回数で調べるのではない
    1. 測定されるもんは、“物理的(外在的)な、計算のできる”ものでなければならない
  • インディケーターの使い方
    1. 個人あるいはグループの目標が何であるかをはっきり説明してくれる
    2. 事務管理機能の測定をするときの客観性の度合いがはっきりする
    3. 異なる組織で同じ機能を遂行する様々な管理グループを相互に比較する尺度がわかる
  • 先行指標(リーディング・インディケーター)
    • 将来はどんなふうになりそうかを事前に示すもの。是正処置を取る時間的余裕を生んでくれるので、問題の発生を防ぐことが可能になる
  • 傾向(トレンド)インディケーター
    • ある標準または期待水準に対して測定したものを示すもの
  • ずらし(スタッガー)チャート
    • アウトプットを次の数ヶ月にわたって予測するもの。このチャートは、毎月情報内容が更新される
    • スタッガーチャートが最も効果を発揮するのは、経済動向を予測するとき
  • アウトプットのコントロールを行う2つの方法。「予測生産」「販売予測」
    • 予測の全責任をひとりだけのマネジャーに持たせるのは、うまくいかない
    • うまくやるには、生産部門と販売部門の両方に予測をつくらせ、複数の人にそれぞれ予測したとおりに行動する責任を持たせるとよい
  • 製造業者が守るべき大原則。顧客が満足するような品質レベルの製品を、できるだけ低いコストで顧客に引き渡すこと
    • 入荷原材料検査(受け入れ検査)
      • 価値が最低の時点でする検査
    • 仕掛り(インプロセス)検査
    • 最終検査もしくは出荷時品質検査
  • 欠陥が客に対して完全な失敗-”信頼性の問題”を起こすような場合は、基準外材料を絶対に通してはならない
    • 心臓ペースメーカーの故障例
  • 品質の向上と、生産プロセスそのものへの妨害を最小限にすることのバランス
    • 遮断式検査、モニタリングステップ
    • 可変式(バリアブル)検査。数週間にわたって問題が起きていなければ、チェックの頻度を少なくするなど
  • ブラックボックスの生産性を高めるための2つの方法
    1. 今やっていることの速度を上げる
    2. 遂行する仕事の性質を変える

第2部 経営管理はチーム・ゲームである 3章 経営管理者のテコ作用

  • マネジャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
  • すべての分野で、仕事はチームでやるものだから
  • マネージャーの活動5つの要素
    1. 情報収集
    2. 情報提供
    3. 意思決定
    4. ナッジング(個人あるいはミーティングを軽くつついて自分の思う方向に進ませること)
    5. 役割モデル
  • これらの要素はミーティングなしでは機能しない
  • マネージャーの生産性(稼働単位時間あたりのアウトプット)を高める3つの方法
    1. マネジャーが自らの活動を遂行する速度を速めて、仕事をスピードアップする
    2. いろいろな経営管理活動に関連のあるテコ作用を増加する
    3. マネジャーの活動のミックスを、テコ作用の低いミックスから、より高いミックスに換える
  • テコ作用を高める3つの活動
    1. 大勢の人がひとりのマネジャーにより影響を受ける場合
    2. ある人の長期間にわたる活動が、特定のマネジャーの、短いが的を射たことばや行動によって影響される場合
    3. ユニークで貴重なカギとなる知識や情報を提供する個人によって、大きなグループの仕事が影響される場合
  • マネジャーのテコ作用は、ポジティブにもネガティブにも働く
    • 決定しないということはネガティブな決定をするのと同じである
  • テコ作用の高いマネージャーの活動は、“ユニークな技術と知識”を持つ人々が取る行動である
  • 「委譲する人」と「委譲される人」の両者が適切な共通基盤を共有しないかぎり、委譲された人は、ただ具体的な指示を受けただけの腕の良い代理人にしかすぎない
  • そのつもりなら人に任せることはできても、自分でやるのが楽しい問題は手放さないものと、“意識的に”決めている場合は、管理の効果姓という点からは、それほど悪いことではない
    • ただ、心にもない権限委譲などというジェスチャーはやめなければならない
  • マネジャーがしばしば部下に任せるのは、ある一定の”タイプ”の意思決定である
  • マネジャーの時間あたりのアウトプットを増加させるには、動かせないものを先に決め、もっとやりくりできる活動をその周辺におくように工夫する
  • マネジャーが適用できる生産原理
    1. 遅くならないうちに早目に「ノー」と言う
    2. たるみ(スラック)、つまりスケジューリングに多少のゆとりを持たせる
    3. プロジェクトに関連する素材というべきものの”在庫”を持たなければならない
    4. 標準化について常に批判的に考え続ける
  • マネジャーの部下は、部下の一人ひとりにつき、週に約半日をあてなければならないという基準で考える
    • おおよそ監督業務の多いマネジャーは、6人から8人ぐらいの部下がよく、3,4人では少なく、10人では多すぎる
  • マネジャーでよくある問題。自分が”コントロールできないことによる仕事の中断”
    • マネジャーとしては、頻繁に現れる中断者に対して、問題の解決をまてるかどうか”はっきり”決めさせるように仕向けるべきである
    • マネジャーの問題の処理の仕方にひとつの”型(パターン)“を設けること

4章 ミーティングーマネジャーにとっての大事な手段

  • ピーター・ドラッガーは、マネジャーがその時間の25%以上をミーティングに使っているならば、それは組織不全の兆候であると言っていた
  • 2種類のミーティングを効率よく行わなければならない
    • プロセス中心のミーティング:知識の共有化と情報交換が行われる
      • 出席者はミーティングがどう進行するのか、どのような実質的事項を論議するのか、何を達成するのか、を心得ていなければならない。

    • ミッション中心のミーティング:具体的な問題の解決が行われる
  • インテル社の例
    • 1on1
      • 主な目的は、相互に教えたり、情報を交換したりすることにある。

      • ワン・オン・ワンの大切な点は、これが〝部下の〟ミーティングであり、その議題や調子も部下が決めるべき筋合いのものと考えることである。

      • アウトラインの作成は部下にさせるべきである。そうすれば嫌でも応でも部下は、取り上げてもらおうと思うすべての問題点や要点を事前によく考えることになる。このことはきわめて大切な点である。また、アウトラインをもらった上役は、ミーティングで何が行なわれるかを初めから知り、議題の「内容の濃さ」に応じてどのようなペースで会合を運べばよいかを支援してやることができる。

      • 話題の重点はトラブルの存在を知らせてくれるインティケーターに置くべきである
      • グローブの教育型マネジメントの原則の適用
        • ”双方が”問題の底にまで達したと満足感を覚えるまで質問を繰り返して、部下を励まし思考の流れを続けさせるようにするべき
      • 1on1は、今やっているミーティングが終わる前に次のミーティングを決めるというように計画すべき
        • 定期的な予定の場合、部下の休暇に合わせられない
    • スタッフミーティング
      • ある監督者とその部下全員が参加する部内会議のこと
      • 討議するべき議題は、出席者3人以上に関係する事柄ならなんでもよい
        • 2人だけに影響する問題に限られてきたら、監督者はその話をやめさせ、もっと大勢のスタッフに関係するものに切り替えさせる一方、2人には後で話し合いを続けるように薦めなければならない
    • 業務検討会
      • 相互に話し合う機会のあまりない人々のための意見交換の場であり手段である
      • この場合、マネジャーが各自の仕事を、直接の上司ではない他のマネジャーに、あるいは社内の他部門の同僚に対して説明する公式のプレゼンテーションをも含めなければならない。
    • 使命中心のミーティング
      • 使命中心のミーティングは特別な目的のために随時開かれるのが普通で、特定の成果を上げるために、それも多くの場合、一定の意思決定に到達するようにと企図されている。

      • このミーティング成功のカギは〝司会者〟が何をやるかにかかっている。

      • ミーティング開催の必要があるとなると、司会者は次のような一連のことに対処しなければならない。第一の事項は出席者に関することである。司会者は出席すべき人を確認し、その人たちをミーティングに来させるようにしなければならない。ミーティングの開催を告げて、なんとか出席してくれればありがたいなどと願うだけでは充分ではない。フォローアップして約束を取りつけることが肝要である。召集をかけた人が来られないときは、代弁する権限のあるものを送らせるように取り計らうことである。

      • 出席者が6,7人以上になると、スムーズに動かなくなり、8人だと絶対に打ち切る上限である
  • 組織不全の真の兆候は、人が25%以上の時間を臨時に開かれる使命中心ミーティングで過ごすときに現れる

5章 決断、決断、また決断

  • ベテランといわれるマネジャーは、かつては優秀なエンジニアであったろうが、今は、採用当時のような技術のエキスパートではない。ともかく、インテル社では、マネジャーは日一日と少しずつ陳腐化しているのである。

  • 理想的な意思決定プロセス
    1. 自由討論
    2. 明確な意思決定
    3. 完全な支持(もし誤っているならば、自由討論に戻る)
  • 理想的なモデルが容易なのは、2つの専門職のみ
    • 長い間在職して、物事のやり方に精通し、その組織固有の価値を十分に認識している上級マネジャー
    • 新規採用の学卒者
  • 同僚グループ症候群
    • 同僚のグループが議論しても会議は進まないが、議長を介入させるような、“同僚プラス1”方式であれば、意思決定が行われやすい
    • たいていの人は、自分ひとりだけが出しゃばるのを恐れる
    • 人々が自分の心にあるものを自由には話さないことは、マネジャーの正しい意思決定を困難にしてしまう
  • マネジャーの意思決定には、アウトプットが伴う
  • 経営管理の意思決定を行うのに、重要な6つの質問
    1. どのような意思決定をする必要があるのか?
    2. それはいつ決めなければならないか?
    3. 誰が決めるのか?
    4. 意思決定をする前に相談する必要があるのは誰か?
    5. その意思決定を承認あるいは否認するのは誰か?
    6. その意思決定を知らせる必要がある人は誰か?
  • 意思決定がなされるにあたって、首尾一貫した方法を採用することは、単に意思決定自体をはかどらせるだけではなくて、それ以上の価値がある。

6章 計画化(プランニング)ー明日のアウトプットへの今日の行動

  • プランニングに必要な3つのステップ
    • ステップ1:環境が要求するもの
      • 環境を検討するときには、顧客側の期待と、あなたのサービスのやり方と実績についての認識の度合を見極めるべき
      • 現在と正体の時点の2つの時間軸でそれを検討し、ギャップを分析する
    • ステップ2:現状把握
      • 現在の能力と仕掛りのプロジェクトをリスト・アップすることによってこれが可能となる。
      • すべての場合に正確であるということは不可能なので、経営管理プロジェクトとしては一定比率のロスを考慮しておくだけの慎重さがあったほうがよい。
    • ステップ3:ギャップを埋めるためになすべきこと
      • プランニングの最終ステップは、環境が要求するものと現在の活動によって生み出されるもののギャップを埋めるために、新しい仕事に着手するとか古いタスクを修正したりすることである。
      • 何をやるか計画したことをことばで公式化するに際して、それら意義がある諸活動を煮詰めて最大限に抽象化し、要約したものが戦略である。その戦略を実行に移すために取る行動が戦術である
      • ある経営管理レベルにおける戦略は、それより高位のレベルでは往々にして先述となる
  • プランニングの活動の基本
    • そのプランニングが、“将来”の出来事に影響を与えるために”現在”達成しなければならない仕事(タスク)を生み出す
  • 計画するときに解答しなければならない問い。「明日の問題を解決するために今日何をなすべきか
  • MBOの背後にある考え方。「目的地を知らずして、そこへ行き着くことはできない
  • MBOを成功させる2つの質問
    1. わたしはどこへ行きたいか?(目標)
    2. そこへ到達するためには自分のペースをどう決めるか?(マイルストーン、主要成果(キーリザルト))
  • フィードバックが効果的にであるためには、それが測定している活動が起こったならただちにわかるようにしておかなければならない
    • MBOを1年を基準として計画するならば、これに対応するMBOの時間枠は少なくとも四半期ごとか、あるいは月に1回
  • MBOシステムの意図はひとりの人間のペースを設定すること
    • ひとりの人間が自分の手にストップウォッチを持ち、自分の業績を測定できることにある

第3部 チームの中のチーム 7章 朝食工場の全国展開へ

  • レストラン1店舗を運営するのに必要なものとはかなり違った仕事のやり方や技能が必要であることがわかった。その中で最も重要なことは、地元の企業家を組織し各フランチャイズの運営にあたらせ、生まれる利点を利用可能な莫大な規模の経済性を失わずに活用する方法を考え出すことだった。

  • 多くのチームがありながら、それをひとつのチームとして束ねるゲームであり、そこにはいろいろの個々のチームがそれぞれ適切な形で、しかもお互いに支援関係をもって存在していなければならない

8章 ハイブリッド組織

  • 組織の典型的な形態
    • 「使命中心」の編成形態:各地域の部署
    • 「機能別」の編成形態:人事や購買といった部署
  • インテル社はハイブリッド組織
    • ハイブリッドという特性は、会社組織全体が、各事業部門、つまり使命中心の部課と機能別編成の部課の2つの混合から成り立っているという事実が基礎となっている。
  • 機能グループは、社内の下請け業者という考え方。営業組織を外部の販売代理業者に委託すると、高額になるため、自社に持った方がよい
    • インテル社従業員の2/3は機能別単位で働いている
  • 会社の大部分を使命中心形態に組織化する長所
    • 個々の集団や単位が、絶えず自分の事業あるいは製品分野に対するニーズと接触を保ち、こうしたニーズの変化に対して迅速に対応できる点のみ
  • 数えきれないマネジャーが組織形態のあり方を模索しているが、いつも出てくる結論はハイブリッド組織構造に代わるものがないという結論だった
  • グローブの法則
    • 共通の事業目的を持つすべての大組織は、最後にはハイブリッド組織形態に落ち着くことになる

9章 二重所属制度

  • NASAの月ロケット打上げの予期せぬ副産物が、組織化のための新しいアプローチであるマトリックス経営管理の開発だった。
  • 工場の保安要員はどこに所属するべきか?
    • 保安要員は、「本社の保安管理者」と「現場の工場長」の双方に所属すればよいのでは?という考え
  • 2人の上司を持つことができるのか?→答えはイエス
  • 技術面の監督者の役割はひとりだけで果たさなければならないのか?→答えはノー
  • こうしたハイブリッド組織を機能させるには、〝個々の意思決定権をこのグループに自発的に委ねること〟が必要である。
    • そのメンバーになった人間は、完全な個人行動の自由は持てない
  • ハイブリッド組織を機能させるには、機能別編成グループの資源が、使命中心集団のニーズを満たす形で割り当てられ供給されるように、両者をうまく調整する方策が必要である
  • 広告は、誰から見ても一貫したイメージを反映すべき。一部門が勝手に自分たちの広告代理店をみつけて使うといったことを認めてはならない

10章 コントロール方式

  • 職場環境での行動は、以下の3つの方法でコントロールされる
    1. 自由市場原理の力
    2. 契約上の義務
    3. 文化的価値
  • マネジメントの役割
    • 文化的価値については、マネジメントは信頼感が生き続けるのに不可欠な、共通した一連の価値観、目標、手段を開発育成しなければならない
    • その方法は、「明瞭に表現すること」「模範を示す」の2つ
  • 文化的価値のコントロール方法
    • 個人の動機づけによる方法
    • 職場環境の性質による方法
  • CUA要因(ファクター)。職場環境の性質を測定するのに使われる
    • 環境の複雑さ(Complexility)
    • 不確定さ(Uncertainty)
    • 不明確さ(Ambiguity) マネジャーのコントロール要素 本書p.234 図10-1から筆者が抜粋
  • 新入社員の例
    • かなり高い「自分の利益」に立脚している。そこでCUA要因の低い、明白に規定された仕事を与えるべき
    • その後、次第に同僚、上司、部下との業務体験を積み、やがて組織の価値、目標、手段などを学んでいく
  • 「自分の利益」を抱いて入社してくる社外の年配の人を採用した場合
    • 彼には難問を抱えた組織を与えて管理を任せるしかない
    • われわれにできるのは、せいぜい幸運を祈り、彼が「自分の利益」を早く忘れ去り、なるべく早くCUA要因を減らして本務をこなしてくれるよう望むことくらいである

第4部 選手たち 11章 スポーツとの対比

  • 人が仕事をしていないときの理由を知る問い。「その仕事に生活がかかっているとすれば、それができるか?
    • イエスなら、本人はやる気がない
    • ノーなら、能力がない
  • マネジャーの最も重要な仕事(タスク)は、部下から最高の業績を引き出すこと
    • そのため、「訓練」と「動機づけ(モチベーション)」がマネジャーとしての問題の取り組み方である 業績を引き上げる方法 本書p.242 図11-1から筆者が抜粋
  • 良いモチベーションというのは業績が良くなることであって態度や気持ちの変化ではない
    • 大切なのは、環境が変わったために”業績(遂行行動)“が良くなるか悪くなるかである
  • 「産業革命」の初期以来の西洋史を振り返ると、ほとんどの時代において、モチベーションは処罰への恐怖が一番の基になっていた
  • この30年ほどの間に、いろいろな新しいアプローチが現れて、恐怖に的を絞った古いやり方に取って代わり始めた
  • 何が人に仕事をさせるかということについての私の説明は、モチベーションに関するエイブラハム・マズローの理論を強いよりどころにしている
  • マズローの欲求階層
    • 生理的欲求
    • 安全/安定欲求
    • 親和/貴族欲求
    • 尊敬/承認欲求
    • 自己実現欲求
  • 人を駆り立ててベストを尽くさせる内面的な2つの力。「能力に突き動かされるか」「達成意欲(アチーブメント)に駆られるか
  • 人によっては単に自分自身を”テスト”しなければ気がすまない者がいることを実証した
    • 伸びようとする欲求が自発的に現れないときには、マネジメントがそれを助成するような環境をつくる必要がある
    • MBOにおいては、目標を相当高いところに設定しておき、個人(あるいは組織)がたとえ一生懸命努力したとしても、それを成し遂げる可能性は五分五分というようにしなければならない
  • 欲求階層の上のレベルでは、人が自己実現意欲を十分に発揮していると、金銭自体はもはやモチベーション源ではなくて、むしろ”達成(アチーブメント)の尺度”になる
  • モチベーション階層を測定するテスト
    • 昇給の絶対額が重要→生理的あるいは安全への欲求内で働いている
    • 昇給が他の人の昇給と比べてどうなるかが問題→尊敬/承認あるいは自己実現への欲求内で働いている
  • マネジャーのやることは、まず、各人を訓練し、次に、自己実現への欲求が彼らを刺激し動機づけるような点まで引き上げることである
  • 職場を競技場のように考えてみれば、部下を能力の限界に挑戦する「スポーツ選手」のように考えることができ、それが、チームを不断の勝利者に導くカギとなる

12章 タスク習熟度

  • 20世紀初頭は、仕事についての考え方も単純だった。1950年代になると、モチベーションやリーダーシップの理論が実験の対象となったが、明確なエビデンスがなかったので、最適のマネジメント・スタイルは存在しないという結論を出すのは避けようとしていた。
  • TRM(タスク関連習熟度)
    • 特定の人または特定のグループの人々は、ある仕事では高いが別の仕事では低いTRMを持つことが十分ありうる
    • モニタリングを実施するかしないかは、監督者がタスクを”委任する”のか、“放棄する”のかの差となる
      部下のタスク習熟度効果的マネジメント・スタイルの特徴
      高いマネジャーの関与を最小限に。目標を設定し、モニターする
      中程度個人志向。双方向通行的コミュニケーション、支持、お互いの判断力を重視する
      低い明確な構造(仕組み)、タスク志向。“何を""いつ""どうして”を示す
  • この理論は、親と子の関係の展開に類似している。子の成熟につれて、最も効果的な親としてのスタイルも変化する
  • マネジャーは部下の仕事にはまり込んで代わりに意思決定をしたいか、あるいは、完全に放り出してわずらわされたくないか、のいずれかと考えがち
  • 仕事を離れたときの親密な関係が仕事上にも同じような関係をもたらすこともあるが、それは必ずしも有効とは限らない

13章 人事考課(裁判官兼陪審員としてのマネジャー)

  • 難しい人事考課を行うことこそ、管理・監督者が部下に提供できる”タスク関連フィードバックの中でたったひとつの最重要な方式”なのである
  • 人事考課の目的。「部下の業績を改善すること
  • 人事考課の用途
    1. 部下の技能水準の欠陥を矯正する方法は何かを発見すること
    2. 同じ技能水準の中でより高い業績水準に押し上げるように部下の”モチベーション”を強めること
  • 業績の査定
    • 業績の難しさをよわめるためには、管理・監督者は部下に何を期待するかを事前に自分の心の中で明確にし、それから部下がその期待どおり実行したかどうかを判断してみること
    • 人事考課における最大の問題は、管理者が通常部下に何を期待しているかをはっきり決めていないことである
  • 管理・監督者は部下の活動とその活動から生じるアウトプットとの間の時間のずれ(オフセット)を考慮すべき
    • アウトプットのインディケーターは、いわば遠い星からの光のように、数年前に行われたことを示しているにすぎない
  • マネジャーを考課するときに判断するのは、その人の業績およびその人の監督下のグループの業績の両方である。
  • 人事考課の内容を伝えるとき、心に留めておく3つのL
    1. Level:相手のところまで降りていって率直に
    2. Listen:相手の話をよく聞き
    3. Leave yourself out:自分を圏外において、客観的に見ること
  • 人間は一時に吸収できるメッセージには限界がある
    • **人事考課の目的は、部下を観察して得た”あなた側の”真実を洗いざらい出すことではなくて、“彼の”業績を向上させることである。**そこで、述べることは、少なければ少ないほどよいといってもよい
  • 人事考課ワークシート。下記を洗い出し、重要でないことを削除する
    1. プラス面
    2. マイナス面
    3. 伝えるべきこと
  • 人事考課には、相手を驚かせるようなことは含まれないほうがよい
  • 問題解決のステップ。問題となる社員は、以下のステップのどこにいるかを把握し、それに応じた対応をとる
    1. 無視する
    2. 否定する
    3. 他人を非難する
    4. 責任を取る(この段階から、実行を意味する)
    5. 解決策を見つける
  • 高業績達成者(アチーバー)こそ、業績改善の試みにもっと時間をつかうべきである
  • 私の経験では、対面して話合いをする若干”前に”文書による考課を部下に与えるのが最善である

14章 2つのむずかしい仕事

  • マネジャーの仕事で心理的負担の大きい2つの仕事
    1. 社員になる可能性のある人間の面接
    2. 貴重な人材が退社しないように話合いをすること
  • 面接の目的
    1. 優秀者を選抜すること
    2. あなたがどういう人間か、会社はどういうところかについて教育すること
    3. お互いに一致する点は何かを見極めること
    4. 担当職務について納得させること
  • 面接で入手すべき4つの情報の分類
    1. 技術/技能:志望者の”技術的”知識に関して理解しようとすること
    2. 知識を使って何をしたか:過去の仕事で、どのような技術(スキル)と技術知識を”使って”仕事を達成したか
    3. 差異:知っていたこととしたこと、つまり能力と実績との間にいかなる”差異”があったかの理由を探すこと
    4. 仕事上の価値観:一連の”仕事をする上での価値観”、つまり、仕事の面で当人を導いているものをつかむこと
  • 面接の最終目的は、志望者が会社の環境の中でいかに行動し業績をあげられるか判断すること。これは、人事考課に関して強調した、“可能性の罠にはまるな”とは相容れないところにはなる。
  • 面接者には、自分自身と自分の環境をあるがままに見せるべきである
  • 退職相談
    • 最初の相談では、その時点で決心を変えさせようとしてはいけない。時間を稼ぐ
    • 部下の転職先が決まっている場合、毎日一緒に働いてきた人々に対する約束のほうが、最近たまたま知り合った人に対する約束よりはるかに強いのだということを気づかせる

15章 タスク関連フィードバックとしての報酬

  • お金はマズローのモチベーション階層のすべての段階において意味がある
  • ミドルマネージャーは、通常は充分もらっているので、金額そのものに決定的ともいえる物質的な意味を持たせることはない。しかし、物質的な意味が全然ないというほどに充分とはいえない
  • 業績ボーナスの比重目安
    • 上級マネジャー:基本が高い金額を支給されているので、業績ボーナスは50%程度まで引き上げるべき
    • ミドルマネージャー:業績ボーナスを10%~25%の範囲で支給するべき。大幅な変動があると、個人的には困ることもあるだろうが、少なくともタスク関連のフィードバックを味あわせてやることができる
  • 昇進を考慮する場合には、ピーターの法則を考えなければならない
  • 職務遂行要件を「満たす」遂行者の2つのタイプ
    1. それ以上はやる気を持たず、もっと上の挑戦に向かおうとしないタイプ。競争しない人間
    2. 「満たす」遂行者は絶えず競争する人
  • われわれマネジャーは正直な考課と正直なメリット・ベースによる報酬を、部下に責任を持って与えなければならない

16章 なぜ教育訓練が上司の仕事なのか

  • たったひとりの従業員に対して充分な訓練を施しておかなかったことからくる報いは、深刻な結末となることがある
  • 訓練がその効果を生むには、そのプログラムを絶えず首尾一貫させ、信頼できる存在として維持しなければならない
    • トレーニングというのはひとつの継続したプロセスであって、単なる偶発的な出来事であってはならない
  • インテルでは2つの訓練を明瞭に分けている
    1. 新規従業員訓練:われわれの組織に入ってきた新しいメンバーに対して、それぞれの職務遂行に必要な技能を教え込むこと
    2. 新技能訓練:われわれの組織に属している人々に対して、新しい知識や原則や技能を注入すること
  • 訓練を行うためのステップ
    • これは教えておかなければならないと感じる事柄のリストを作る
      • このリストの中身や範囲に関しては制約を設けてはならない。単純なことから会社の目的や価値体系などといったような、より高度なものまで、すべてを含めるべきである
    • そのリストの中の項目を実際に訓練するのに役立つような教材や、経営管理者の中で教えうる人の”在庫調べ”を行い、優先順位をつける
      • 最初はあまり大掛かりではない、かつ緊急性の高いテーマから始めるのがよい
    • 最初の講義を行ったら、第二のレクチャーの開発に取り組むようにする
      • 初めてコースを教えることは一種の捨て金として考えるべき

最後にもうひとつ(これからの行動指針チェック・リスト) 生産関係

  • 工程、組み立て、試験生産というように自分のしごとの業務内容をはっきりさせる
  • 現在取り掛かっているプロジェクトの中で制約的(リミッティング)ステップとなっている困難な点を見つけ、それを中心とした仕事の流れを描く
  • 自分の仕事の中で受け入れ検査、仕掛り検査、最終検査を行うのに適切な場を規定し、かつ、これらの検査が処理段階をモニターするものなのか、遮断式のものなのかを決める。また、基準を緩めて可変的(弾力的)検査方式に移れる条件を明らかにする
  • グループのアウトプットを測るための6つの新しいインティケータを見出す。ただし、それはアウトプットを量的にも質的にも測定できるものであること
  • 仕事の話でこのインディケーターを定例的に使ってチェックする習慣をつける。また、スタッフミーティングでもこの検討を定期的に行う
  • いま一番力を入れている最重要の戦略(行動計画)は何か。それを必要とした環境からの要請と、現在の状況や、事態の動きはどうか。もしこの戦略を成功裡に実施できたなら、あなたは会社にとって満足すべき状態が結果として現れてくると思うか

テコ作用

  • 一番退屈で時間のかかる仕事の簡素化を実施する。全関連作業手順の少なくとも3割を省略する
  • 自分のアウトプットを明確化する。つまり自分が管理し、また影響力を及ぼしている組織のアウトプットの構成要素は何か。重要度順にリストアップする
  • 情報や知識を収集する方法を分析する。“見出し""新聞記事""報道週刊誌”のバランスはどうか。重複しているか
  • ”旅”に出てみる。その後、旅の途中で出会った人々との交流や取引を列挙する
  • 一ヶ月に一度は”口実”を見つけて旅に出るようにする
  • 部下に次に任せようとしている仕事はどのようにしてモニターするつもりかを書き出す。何をいかにして見ているか、また、どの程度の頻度か
  • ゆとりが生じたときにこなせるプロジェクトの一覧表を作り出す
  • 部下の一人ひとりと1on1ミーティングをスケジュールを決めて行う(1on1ミーティングとはどういうものであるかを事前に説明し、準備させる)
  • カレンダーで先週のところを見る。活動を、重要性(テコ作用)の低いもの、中程度のもの、最重要のものに分類する。最重要にはいるものをもっと多くするための行動計画を作成する(どの活動を減らすことにするか)
  • 次週の時間面での困難さを予測してみる。どのくらいの時間がミーティングに取られると思うか。どれがプロセス中心ミーティングで、どれが使命中心のミーティングか。もしも後者が自分の時間の25%以上を占めているなら、それを減らすにはどうしたらよいか
  • 向こう3ヶ月間、組織にとって最も重要な目標は何かを明確化する。キー・リザルトが出るようにそれを推進する
  • 前記の事柄を部下とも充分討議した後に同様にやらせる
  • 自分の責任範囲だが未処理になっている決定がいくつあるかをリストアップする。そのうち3つを選び、6つの質問法を用いて意思決定の仕方の筋道を立てる

業績達成

  • マズローの欲求段階説に従って自分の動機の状態を評価してみる。ついで部下のやる気についても同様に行う
  • 部下に競争のルールを説明し導入する。つまり業績達成基準を示すための一連のインディケーターを決める
  • 部下に、タスク関連のフィードバックを与える場合、どういうやり方があるか、その様々なやり方をリストアップする。そのフィードバックを基にどのくらい進歩したかをどれだけうまく把握できるか
  • 部下一人ひとりのタスク習熟度を低い、中位、高いに分類する。それぞれにふさわしいマネジメント。スタイルを評価する。今、自分の用いているマネジメント・スタイルをあるべきスタイルと比較する。
  • 一番最近に上司から受け取った考課と、部下に与えたタスク関連のフィードバックとしての地番新しい考課を評価する。それは業績を向上するのにどれくらい役立ったか。それを行うときのコミュニケーションのやり方は、どんな状態のものだったか
  • こうした考課を理想的な形でやり直してみる